顎関節症
マウスピース・ボトックス療法を用いた最適アプローチ
「顎の関節の周りや頬の筋肉が重く、硬く強張っている」
「口が指2本分ほどしか開かない」
「耳の付け根あたりで『カクッ』『ジャリジャリ』と不快な音が響く」
お口を開閉するときに連動する「顎の関節(がくかんせつ)」や、噛むための筋肉(咀嚼筋:そしゃくきん)に慢性的なトラブルが生じる「顎関節症」は、現代社会において非常に多くの人々を悩ませている現代病の一つです。
顎関節症による痛みや「口が開かない(開口障害)」という症状は、患者様の毎日の生活の質(QOL)を著しく低下させ、精神的な疲労感をもたらす大きな原因となります。
上永谷丸山台デンタルオフィスでは、「口腔外科認定医としての高度な鑑別診断力」をベースに、患者様一人ひとりに合った、お身体に無理のない、多角的かつ生体低侵襲なアプローチによる症状改善を目指しています。
口腔外科認定医による、的確な診断
顎関節症の治療を安全かつ効果的に進める上で、最も重要なステップは「最初の診査・診断」です。
実は、一口に「顎が痛い」「口が開かない」と言っても、その病態は大きく以下の4つのタイプ(1型〜4型)に分類され、それぞれアプローチが全く異なります。
顎関節症の主な分類(日本顎関節学会による病態分類)
Ⅰ型(咀嚼筋障害)
顎を動かすための筋肉(主に頬の「咬筋」や頭の横の「側頭筋」)が過度に緊張し、疲労骨折のような慢性的な筋肉痛を起こしている状態です。
頭痛や肩こりを併発しやすい特徴があります。
Ⅱ型(関節靭帯・組織障害)
顎関節を包んでいるカプセル(関節包)や靭帯に無理な力が加わり、捻挫のような炎症を起こして痛む状態です。
Ⅲ型(関節円板障害)
顎の骨と骨の間でクッションの役割を果たしている軟骨「関節円板」が、本来の位置から前方にズレてしまっている状態です。
口を開けるときに音が鳴る(クリック)、あるいはズレた軟骨が引っかかって口が大きく開かなくなる(クローズドロック)という症状が現れます。
Ⅳ型(変形性顎関節症)
長年にわたり顎関節に過剰な負担がかかり続けた結果、顎の骨の頭(下顎頭)や受け皿(関節窩)の形が骨粗鬆症のように変形・磨耗してしまう状態です。
動かすと「ジャリジャリ」「ギシギシ」といった擦れる音がすることがあります。
当院では、これら複雑な病態を、口腔外科認定医が詳細な問診、骨の触診、筋肉の圧痛検査、顎の運動機能分析(開口量や左右への動きの滑らかさの測定)などを通じて精密に識別します。
さらに、顎関節症の症状に非常に酷似していながら、全く異なる重大な疾患(例えば、智歯周囲炎などの深刻な炎症、顎骨内の腫瘍、あるいは三叉神経痛などの神経因性疼痛)が隠れていないかを、口腔外科医としての専門的な知見から厳格にチェック(鑑別診断)します。
これにより、原因を見誤ることなく、患者様の現在の状態に最も合致した安全な治療プログラムを設計することができます。
マウスピース(スプリント療法)
顎関節症の基本治療(初期治療)として、国内外の医学的ガイドラインにおいて推奨されているのが「マウスピース(スプリント療法)」です。
当院では、精密な噛み合わせ分析に基づき、高精度なハードタイプ(または適正な硬さ)のスプリントを製作しています。
マウスピースの具体的なメカニズム
顎関節への過度な圧力の緩和(除圧効果)
夜間、就寝中にマウスピースを装着することで、上あごと下あごの歯が直接噛み合うのを物理的に防ぎます。
マウスピースの厚みによって、顎の関節の内部(関節円板や骨が収まるスペース)に適度なゆとりが生まれ、押し潰されそうになっていたクッション組織への圧迫を解放します。
理想的な「顎の位置」への誘導
噛み合わせのバランスが乱れていると、下あごが無理な位置へと誘導され、関節に慢性的な歪みが生じます。
スプリントの表面を平坦かつ精密に調整することにより、下あごの骨が筋肉にとって最もリラックスできる自然な位置へと安定しやすくなります。
歯と歯槽骨、修復物の保護
就寝中の歯ぎしりやくいしばりの力は、起きている時の何倍にも達することがあり、ご自身の体重以上の負荷が局所にかかることも珍しくありません。
マウスピースがその強大なエネルギーをクッションのように全体へ分散して吸収するため、大切な天然歯が削れたり、セラミックなどの被せ物が割れたり、歯を支える骨がダメージを受けたりする二次被害を防ぎます。
当院では、装置をお渡しした後も定期的に来院いただき、症状の変化や削れ具合に合わせてスプリントの表面を細かく削り直す調整を行います。
顎の筋肉が緩んでいくにつれて変化する「理想的な位置」を常に追いかけ、装置の効果を最大に維持できるようフォローいたします。
ボトックス療法(ボツリヌス治療)
マウスピースによるアプローチを一定期間行っても、朝起きたときの強い疲労感が取れない場合や、日中も含めて無意識に行われる「強烈なくいしばり・歯ぎしり」の悪習慣(ブラキシズム)を根本からコントロールできない場合があります。
このようなケースにおいて、当院では補完治療として「ボトックス療法(ボツリヌス治療)」を導入しています。
ボトックス療法とは、天然のタンパク質から精製された薬剤(ボツリヌス・トキシン)を、過度に肥大・緊張している咀嚼筋(主に頬の「咬筋」など)に対して局所的に注射する治療法です。
この薬剤には、神経から筋肉へ「噛みなさい」という収縮の命令を伝える物質の放出を、一時的にブロックする働きがあります。
これにより、硬く強張っていた筋肉の働きが適度にリラックスし、顎を締め付ける強大な力が自然に減じられます。
当院のボトックス療法のメリット
「くいしばり・歯ぎしり」の力を抑制
歯ぎしりやくいしばりは、脳からの無意識の指令であるため、ご自身の意思(根性や注意)だけで完全に止めることは困難です。
ボトックスによって筋肉の最大出力を科学的に抑えることで、睡眠中に無意識にかけてしまう顎関節や歯へのダメージを、お身体への負担が少ない形で緩和することができます。
咀嚼筋由来の慢性的な頭痛・肩こりの改善
咬筋の緊張は、頭の横にある側頭筋や、首・肩の筋肉(僧帽筋など)へと連鎖的に繋がっています。
顎の筋肉の強張りが解き放たれることで、長年悩まされていた慢性的な緊張型頭痛や、頑固な肩こりが軽くなるケースもあります。
エラの張りの解消と、お顔立ちの自然な調和
筋トレを繰り返すと腕の筋肉が太くなるのと同じように、毎日くいしばりを続けていると咬筋が過剰に発達し、顔の「エラ」が横に張り出してきます。
ボトックス治療によって筋肉が本来の適切なボリュームへと戻ることで、結果としてエラのは張りがすっきりとし、シャープで自然なお顔立ちのラインへと調和していきます。
安全性への配慮
当院で使用する薬剤は、世界的に豊富な臨床実績を持つ安全性の高い製品です。
口腔外科認定医が、筋肉の走行と厚みを正確に触診し、噛む・話すといった日常生活に必要な最低限の機能は維持しながら、余剰な過緊張だけを取り除くよう、注入量と部位を厳密にコントロールします。
※効果の持続期間は個人差がありますが、一般的に数ヶ月〜半年程度であり、定期的に維持することで筋肉そのものが過剰に緊張しにくい良好な体質へと定着しやすくなります。
なお、ボトックス療法は顎関節症の症状緩和を目的とした自由診療となります。
ご相談を迷われている患者様へ
「顎が痛くて、毎日の食事がちっとも美味しく感じられない」
「口を開けるたびに音が鳴るので、人と楽しくおしゃべりをするのが億劫になってしまった」
「整体やマッサージに通っても良くならない頭痛や肩こりに悩んでいる」
そんな切実な思いを抱えながら、どこへ行ってもすっきりとした回答が得られず、一人で不調を耐え忍んでいらっしゃる患者様が本当にたくさんいらっしゃいます。
顎関節症は、お身体のバランス、心のストレス、そして日々のお口の使い方が複雑に絡み合って生じる「あなたのお身体からのSOS」のサインです。
「あごが少しカクカク鳴るだけだから、まだ行くほどではないかも」と遠慮される必要はまったくありません。
早期に正しい知識を知り、負担を減らすケアを始めることこそが、将来の重症化を防ぐ最も確実な道です。
あなたのお口全体の健やかな未来と、痛みのない快適な笑顔を取り戻すために、私たちスタッフ一同、真摯に寄り添い全力でサポートさせていただきます。
