歯ぎしり、食いしばり
無意識の圧迫から大切な歯を守る
「朝起きると、顎の周りがどんよりと重く、疲労感がある」
「むし歯ではないのに、冷たいお水がキーンとしみる」
「歯の先端がすり減って平らになっている」
「詰め物を入れても、すぐに割れたり外れたりしてしまう」
実は、これらの症状の背景には、ご自身では全く自覚していない「歯ぎしり」や「くいしばり(ブラキシズム)」という無意識の悪習慣が深く関わっている可能性が非常に高いのです。
私たちは、日中の起きている時間であれば、自分の意志で噛む力をコントロールすることができます。
しかし、夜間の就寝中や、仕事・家事・勉強などに過度に集中しているときに行われる歯ぎしりやくいいしばりは、脳からの無意識の指令によって引き起こされるため、自らの意志で止めることが困難です。
しかも、その際に歯や顎関節、周囲の筋肉にかかる負荷は、お食事を美味しく召し上がっているときの数倍から、時にはご自身の体重を超えるほどの強大な破壊力へと達することが分かっています。
上永谷丸山台デンタルオフィスでは、この「目に見えない無意識の負荷」から患者様の大切なお口の健康を守るため、「マウスピース(ナイトガード)」による物理的な保護・除圧と、過剰に発達した筋肉をリラックスさせる「ボトックス療法(ボツリヌス治療)」を組み合わせた改善プログラムをご提案しています。
お口の中に現れる危険なサインと症状の例
歯ぎしりやくいいしばりの最も厄介な特徴は、「患者様ご自身がその事実を認識しにくい」という点にあります。
特に、音を立てずにギリギリと噛み締め続けるタイプ(クレンチング)や、日中に無意識のうちに上の歯と下の歯を接触させ続けてしまう癖(TCH:歯列接触癖)は、無音であるため、ご家族に指摘されることもなく、ご自身がトラブルの渦中にいることに気づかないケースがほとんどです。
しかし、長年にわたり過剰な圧迫を受け続けたお口の中には、以下のような特有の症状や客観的なサインが明確に現れてきます。
これらの中に、ご自身に当てはまるものがないか慎重にチェックしてみてください。
骨隆起(こつりゅうき)
下の前歯の裏側の歯ぐきや、上あごの中央、奥歯の頬側の歯ぐき周辺に、硬い骨のコブ(出っ張り)がぽっこりと突き出てくる現象です。
これは、強大な噛み合わせの圧力に対抗しようとして、歯を支える骨(歯槽骨)が局所的に肥大・増殖したものであり、慢性的な負荷がかかっている動かぬ証拠と言えます。
頬粘膜の白い線と舌のへこみ(圧痕)
頬の内側の粘膜に、上の歯と下の歯が合わさるラインに沿って、水平に白い筋(角化線)が浮き出てきます。
また、舌のふちがギザギザと波打つように凹んでいるのも、無意識のうちに歯の内側に舌を強く押し付け、周囲から強い力で挟み込んでいるために生じるサインです。
原因不明の「歯の知覚過敏」やズキズキとした痛み
むし歯が見当たらないにもかかわらず、冷たいお水がキーンとしみたり、ハブラシが当たるとピリッと痛んだりします。
過剰な力が加わり続けることで、歯の根元付近の組織(エナメル質とセメント質の境界)が応力集中によってミクロ単位でポロポロと崩落していく「アブフラクション」という現象が起き、内部の神経に刺激が伝わりやすくなるためです。
また、歯を支えるクッション(歯根膜)が炎症を起こし、噛んだときに浮いたような鈍痛を感じることもあります。
天然歯の摩耗と、微細なひび割れ
歯の噛み合わせの面(山と谷の構造)が平らにすり減り、内部の黄色い象牙質が露出してきます。
さらに、過酷な応力によって歯の表面に無数の細かなひび割れが入り、それが原因で突然歯が真っ二つに割れてしまい、結果として抜歯を余儀なくされる悲しいケースも少なくありません。
詰め物・被せ物の頻繁な脱離や破損
歯科医院で精密に治療したはずのインレー(詰め物)やクラウン(被せ物)が、何度も外れたり、割れたりします。
特に、強固であるはずのセラミックが短期間で破損する場合、その原因の多くは素材の不良ではなく、夜間に加わる想定外のブラキシズムの力によるものです。
歯周病の急速な進行(咬合性外傷)
歯周病菌による炎症がある場所に、さらに歯ぎしりによる揺さぶりの力が加わると、歯を支えている周囲の骨が急速に吸収(破壊)されていきます。
これにより、歯周ポケットが急激に深くなり、歯のグラつきが急速に悪化する原因となります。
マウスピース(ナイトガード)
歯ぎしり・くいしばりのダメージからお口全体を守るための第一選択として、当院では患者様専用にオーダーメイドで製作する「マウスピース(ナイトガード)」による治療を行っています。
市販されている簡易的なマウスピースとは異なり、当院では口腔外科的な精密な噛み合わせ分析に基づき、適切な硬度と厚みを持ったハードタイプ(または適正にコントロールされた素材)の装置を調整してお渡ししています。
マウスピースがもたらす具体的なメリットと役割
歯と修復物の直接的な摩耗を防ぐ
夜間の就寝中にマウスピースを装着することで、上下の歯がダイレクトに擦れ合うのを物理的に遮断します。
過剰な力が加わったとしても、削れるのはご自身の歯ではなくマウスピースのプラスチック素材であるため、大切な天然歯やセラミックの摩耗を最小限に抑えることができます。
強大な圧力を全体に均等に分散する
特定の歯だけが強く当たっていると、その歯に集中的に破壊的な負荷が加わります。
マウスピースの表面を滑らか、かつ均等に噛み合うように精密に設計(咬合調整)することで、夜間に生じる強大なエネルギーを歯列全体へバランスよく分散させ、局所的なダメージを和らげます。
顎関節の負担軽減とリラックス効果
マウスピースに適度な厚みを持たせることで、下あごの骨の頭(下顎頭)が顎関節の受け皿に必要以上に深く押し込まれるのを防ぎます。
関節の内部に適度なスペースが生まれて除圧されるため、顎関節のクッション(関節円板)への血流が保たれ、朝起きたときの顎の痛みや強張りが緩和されやすくなります。
装置をお渡しした後も、患者様の削れ方の癖や筋肉の緩み具合に合わせて、定期的にマウスピースの表面を細かく削り直すメンテナンスを行います。
ボトックス療法(ボツリヌス治療)
マウスピースによるアプローチは、歯や顎を物理的に保護するために重要ですが、「筋肉が過剰に収縮しようとする力そのもの」を弱めるわけではありません。
そのため、あまりにも歯ぎしりの力が強い患者様の場合、マウスピースが数ヶ月で穴だらけになってしまったり、装置をはめていてもなお、翌朝に強い筋肉痛や頭痛が残ってしまったりすることがあります。
このようなケースに対して、当院では無意識の最大出力を科学的にコントロールするアプローチとして、「ボトックス療法(ボツリヌス治療)」を導入しています。
当院におけるボトックス療法の期待できる効果
無意識下の「破壊的な噛み締め力」の抑制
睡眠中の歯ぎしりは、大脳の深い部分からの指令であるため、ご自身の根性や意識で止めることはできません。
ボトックスによって筋肉の最大出力を科学的に抑えることで、無意識のうちに歯や顎にかかってしまう過酷なストレスを、お身体に優しい形で根本から和らげることができます。
筋肉由来の慢性的な不調(頭痛・肩こり)の同時改善
頬の咬筋の強張りは、こめかみにある「側頭筋」や、首から背中にかけて広がる「僧帽筋」へと連鎖的に緊張を波及させ、頑固な緊張型頭痛や肩こりの原因となります。
顎の周りの筋肉が柔らかく解放されることで、長年悩まされていたこれらの全身的な随伴症状が軽くなる方が多くいらっしゃいます。
フェイスラインの自然な調和(エラの張りの解消)
毎日欠かさずハードな筋トレを行っていると腕が太くなるのと同様に、毎晩激しくくいしばっている方の咬筋は大きく膨らみ、顔の「エラ」が横に張り出してきます。
ボトックス治療によって筋肉の過剰なボリュームが適切なサイズへと戻ることで、結果としてお顔立ちのラインがすっきりと整い、本来の自然で柔らかな表情へと調和していきます。
徹底した安全管理
当院では、お口の解剖学(筋肉の走行や厚み、神経の位置)を深く熟知した歯科医師が、事前の丁寧な触診に基づいて正確な位置・深さ・量を見極めて注入を行います。
お食事を噛む、おしゃべりをするといった日常生活に必要な本来の機能は維持しながら、お身体に害を及ぼす「余剰な過緊張」だけを狙って取り除きます。
(※効果の持続期間には個人差がありますが、一般的に約数ヶ月〜半年程度です。
定期的に適切な間隔で処置を重ねることで、筋肉そのものが過剰に緊張しにくい良好な状態が体質として定着しやすくなります。
なお、ボトックス療法は自由診療の扱いとなります。)
ご相談を迷われている患者様へ
「歯ぎしりくらいで歯医者に行くのは大げさかもしれない」
「音が鳴っていないなら、自分はきっと大丈夫だろう」
そう思って、日々のちょっとしたお口の違和感や、朝起きたときの原因不明の顎の重だるさを、そのまま見過ごしてしまってはいませんか。
歯ぎしりやくいいしばりは、決して特別な病気ではなく、ストレスの多い現代社会を生きる多くの方が、無意識のうちにお身体のバランスを保とうとして行ってしまう、ごく身近な生体反応の一つです。
しかし、その無意識の健気な反応が、結果としてあなたの大切な天然歯を削り、傷つけ、寿命を縮める最大の原因になってしまっているという事実は、非常に見落とされがちです。
「むし歯ではないけれど、なんだか奥歯が重苦しい」「自分の歯がすり減っている気がする」といった、どんなに些細な違和感でも構いません。
手遅れになって大切な歯が割れてしまう前に、私たちの専門知識と技術を頼ってください。
私たちスタッフ一同、誠実に、全力でサポートさせていただきます。
